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山寺から学んだこと:言葉を交わさず一緒に過ごすウェブ空間の設計
この記事の目次
山寺から海辺へとつながった問い
ウェブ上に何かの場所をつくると聞くと、まずはその見た目を思い浮かべる。建物や木を置き、光を当て、キャラクターが歩き回れるようにする。けれど風景が完成しても、問いは残る。訪れた人はそこで何をすればよいのか。他の人に出会ったら、どう反応するのか。操作をやめたときにも、そこにとどまる理由はあるのか。
山寺は、この問いを考えるのに適したオンラインのお寺だ。公式紹介には「言葉を交わさず、一緒に座っているオンラインのお寺、山寺」とある。場所と行動、他の人との関係を一つの文で説明している。たくさんのことを達成できるかより、どのような状態でいられるかを先に伝える紹介だ。
私がつくったKortress Beachも、山寺から着想を得ている。ただし、海辺には海辺に合った行動が必要だった。自分のキャラクターであるKorshを使い、花火に火をつけたり、一緒に座ったり歩いたりする空間をつくった。この記事では、まず山寺の画面と行動の構成を見ていく。Beachの実際のコードと修正過程は、別の制作記で取り上げる。
山寺は別の制作者によるサービスだ。ここに載せた3枚の画像は、記事の準備中に実際にアクセスし、デスクトップ画面を撮影したものだ。画面上で確認した操作、制作者がインタビューで説明した内容、制作の観点からの解釈を区別して読めるようにまとめた。機能の説明は、2026年11月に確認した画面を基準としている。
お寺という場所が最初の行動を教えてくれる
山寺の制作者はパク・ジンウォンだ。聯合ニュースのインタビューでは、実際のお寺で少し休みたくても、出かける時間や気力が足りず、オンライン空間をつくったと説明している。AIの助けを借りて実装した制作過程も、このインタビューで紹介されている。聯合ニュースの制作者インタビュー
その背景は画面の構成にもつながっている。本堂の前には道があり、奥には仏像と座布団が見える。キャラクターはそちらを向いている。画面下には合掌、お辞儀、木魚、数珠が並ぶ。長い説明を読む前から、その場所の用途とできる行動を一緒に想像できる。

2026年11月に実際にアクセスして撮影した、本堂前の画面。中央の操作案内と下部の行動メニューを一緒に確認できる。
注目したいのは、建物の写実性だけではない。中央の仏像、その前に置かれた座る場所、そこへ続く道が、同じ方向を指している。訪れた人がどこを見ればよいかを、空間そのものが説明している。道と配置が案内を分担すれば、画面上の説明文がすべてを担う必要も減る。
もちろん、お寺という場所へのなじみは人によって違う。合掌や数珠を知らない人もいるだろう。だからこそ、メニューについた短い名前が大切になる。場所を知る人には予想できる行動を示し、初めて見る人には押してみられる具体的な項目を示す。雰囲気だけの画面から一歩進んでいる部分だ。
最初は移動と視点操作を分けてみる
撮影したデスクトップ画面には、「地面をクリック・ドラッグで見回す・ホイールで拡大/縮小」という案内が見える。山寺を初めて開いたら、まずこの3つを分けて試すとよい。行きたい地面をクリックし、画面をドラッグして周囲を見て、ホイールで距離を調整する。
3D画面では、移動とカメラの回転が混ざって混乱しやすい。キャラクターが歩いているのか、視点だけが変わっているのか、最初は区別しにくいことがある。山寺の案内は、入力方法を短く分けて示している。この記事の操作説明はデスクトップを基準としており、スマートフォンでの操作感と性能は別途確認していない。
その後は、下部メニューから行動を一つずつ選べる。最初からいくつも押すより、移動を止めて一つの行動による変化を見るほうが、画面を理解しやすい。特にお辞儀と数珠は、選んだ後に画面がどう変わるかを比較しやすい項目だ。
右上には音と設定を表すアイコンと、「念仏を聴く」という表示がある。撮影画面のスピーカーにはミュートの印が見える。音が重要な空間でも、訪れた人が現在の状態を確認できる必要がある。音に関する操作は、行動メニューとは別の場所に配置されている。
こうした配置は、制作するときの参考になる。移動の方法、今行う行動、音と設定では、使用頻度も役割も違う。すべてを同じ大きさのボタンで並べるより、置き場所を分けたほうが、画面上で何を先に探せばよいか判断しやすくなる。
お辞儀には始め方と同じくらい止め方が必要だ
下部でお辞儀を選んだ画面では、そのメニューが「止める」に変わる。上部には「周りを見ながら待つことも、止めることもできます」という案内が出る。実行中の行動と中断方法が、同じ画面で分かる構成だ。

お辞儀の実行状態を実際に撮影した。下部の「止める」と画面上部の案内が、現在の状態を伝えている。
繰り返す行動は、開始ボタン一つでは完結しない。実行中なのか、どれくらい待つのか、他の場所を見回してよいのか、好きなときに止められるのかを、訪れた人に伝える必要がある。画面が静かなほど、こうした小さな変化が重要になる。大きな通知がないからこそ、ボタン名一つが状態の説明を担う。
制作の観点では、これはアニメーションの品質とは別の完成度だ。キャラクターがもっともらしくお辞儀をしていても、止め方が見つからなければ、その行動はもどかしいものになる。反対に、現在の状態と抜け出す方法が見えていれば、繰り返す動きを眺めたり、視点を変えたりする余裕が生まれる。動きをつくることと、その動きを利用者が扱えるようにすることは、一緒に設計する必要がある。
この原則は、宗教的な行動だけに当てはまるものではない。一緒に座る、踊る、釣りをするなど、一定時間続く行動にも同じ問いを投げかけられる。押す前と押した後でボタン名は変わるか。途中で抜けられるか。終了したら元の操作に戻るか。空間をつくる側として、こうした切り替わりを具体的に見る必要がある。
数珠は空間を消さずに視線を絞る
数珠を選ぶと、画面中央に数珠が大きく現れ、背後の本堂がぼける。撮影画面には「0 / 108」「1周目」「つかんでなぞるように送る」と表示されている。下部には「閉じる」がある。何に触れればよいか、どのように入力するか、どう閉じるかが一つの画面にまとまっている。

数珠を開いた直後の0回の状態。108回完了後の動作は、今回の撮影では確認していない。
小さな3Dの物を遠くに置いたまま操作させると、どこをつかめばよいか分かりにくい。この画面は数珠を大きく見せ、手を動かす方向を文章で案内している。背景をぼかして注意を中央に集めつつ、本堂の色と形は残している。別の場所へ移動したというより、同じ空間の中で一つの行動に集中する構成として読める。
数珠とお辞儀を比べると、行動ごとに必要な画面が違うことも分かる。お辞儀では、キャラクターと本堂の関係が引き続き重要になる。数珠では、触れる対象が十分に大きい必要がある。同じ下部メニューから始まっても、その後の視覚的な優先順位は変わる。すべての機能を一つの画面の型に当てはめず、行動に合った大きさと距離を選んでいる。
画面の数字は、繰り返しの単位を伝える。同じ動作を続けていても、今何回目かが分かれば進み具合を見失わない。数珠という物を大きく見せることと、回数を読めるようにすることが、一緒に機能する画面だ。
言葉を使わない行動も互いに向けられる
山寺の特徴を説明するとき、チャットがないという事実だけでは大切な部分が抜けてしまう。言葉をあまり使わない空間でも、訪れた人ができる行動は必要だ。合掌、お辞儀、数珠のように、この場所に合った小さな行動が画面の中心にある。会話欄の代わりに何があるのかを見ることで、空間の性格が見えてくる。
制作者のパク・ジンウォンはMBNの電話インタビューで、チャットを別途つくらず、言葉を交わさなくても一人という感じがしない点を特徴として説明している。MBNの制作者インタビュー
この言葉を行動設計の観点から読むと、他の人に自分を説明する負担をどこまで減らせるか、という問いが生まれる。チャットでは文章を考え、送り、返事を待つ。合掌のように意味が比較的決まった行動なら、選ぶ内容を絞れる。挨拶ができても、必ず長い会話を始める必要はない。
もちろん、行動の意味がすべての訪問者に自然に伝わるとは限らない。相手に見えているか分からなかったり、反応を区別しにくかったりすれば、単純な行動でもぎこちなくなる。そのため、言葉のない空間では、キャラクターの向き、動作の始まりと終わり、互いの距離といった手掛かりに、より気を配る必要がある。文字が少ないからといって、設計すべき情報まで減るわけではない。
ボタンの形と風景が同じ体験をつくる
3D空間を評価するとき、モデルや照明だけを見ると見落とすものがある。画面下のメニュー、隅の設定、案内文の文字も、訪れた人が見続ける風景の一部だ。建物とキャラクターが一つの雰囲気をつくっていても、ボタンが別の表現ルールを使っていれば、視線が何度も途切れることがある。
撮影した山寺の画面では、行動メニューが半透明の丸みを帯びた領域に集まり、各項目はアイコンと短い文字で示されている。本堂を広く見せながら、操作する場所を下部で見つけられる構成だ。個々のボタンの装飾を細かく見るより、背景が複雑でも文字を読めるか、選んだ項目を見分けられるかを一緒に見るほうが役に立つ。
お辞儀が「止める」に変わることや、数珠を選ぶとその項目の状態が変わることのように、ボタンは行動の結果も説明する。だからデザインを整える作業は、色や角の丸みを選ぶだけでは終わらない。押す前の期待と押した後の画面が合っているか、同じ種類の行動が同じ方法で示されているかまで確認する必要がある。
自分のサイトやBeachを整えるときにも、この見方はつながる。風景を詳しくつくることと、文字やボタンを整理することでは、仕上がりの質が異なる。キャラクターがよく見えるカメラ角度でも、メニューが手や顔を隠せば使いにくい。きれいなスクリーンショットを選ぶことと、実際の操作に適した構図をつくることを、一緒に考える必要がある。
小さく見える行動の裏には具体的な運用がある
訪れた人に見える機能の数と、制作者が管理する仕事の数は同じではない。画面のボタンが少なくても、接続を待つ状況、動作を取り消す状況、音が出ない状況はそれぞれ起こりうる。最初から機能を増やすより、基本の行動が途切れずにつながるかを確認することが大切だ。
中央日報のインタビューで山寺の制作者は、サーバーの安定化と、念仏・108拝などの基本機能の完成度を優先する方針を説明している。AIを活用したコード作成と、自身が担う企画・コミュニケーションの役割についても話している。公開後も、基本の体験を磨くことに集中するという説明だ。中央日報・Factplの制作者インタビュー
報道に出てくる訪問統計や開発時間は当時の説明なので、この記事では現在の成果として比較していない。山寺で参考にしたいのは、画面に表れた具体的な選択だ。合掌のように短く意味を伝える行動、実行状態を知らせるボタン、操作する対象を大きく見せる画面は、別の場所をつくるときにも参考になる。
Beachでは同じ問いに別の行動で答えた
山寺から得た着想は、オンラインで一緒に過ごす空間をつくれるという点だった。Beachでは自分のマスコットであるKorshを使った。場所は海辺に変わり、訪れた人の行動も、花火に火をつけ、光で文字を書き、並んで座ったり手をつないで歩いたりするものへとつながった。行動で空間の性格を表すという問いが、異なる姿になって続いている。
比べたいのは、それぞれの空間では何が自然な行動になるかだ。お寺で合掌や数珠が場所を説明するように、Beachでは海辺と花火、キャラクターの間の行動がその役割を担う。背景を変えてメニュー名を変えるだけでは足りない。手に持つ道具の位置、他の人との距離、画面上の操作方法も、その場所に合うようにつなぐ必要がある。
Beachについては、その行動を実際につなぎながら修正した過程を、より詳しく説明できる。なぜ波が来る前に地面が先に濡れて見えたのか、一緒に座る動作を始めるとき何を準備する必要があったのか、そのためにどのコードを変えたのか、といった制作記録だ。
続くKortress Beach制作記では、その違いを実際の画面と開発中の動画で紹介する。山寺で見たのは、小さな行動が空間の性格をつくる仕組みだった。Beachでは、その行動がコードとキャラクター、他の訪問者の画面の間でどうつながるようにつくったのかを説明していく。
